木曽ダム水系発電所

木曽ダム水系は、木曽ダムを水源として、寝覚発電所、上松発電所、桃山発電所、須原発電所、大桑発電所へと導水管と導水路にて水をリレーする系と、木曽ダムの水を直接取り入れる木曽ダムの系の2系統がある。

ここでが桃山発電所(上松町)から大桑発電所までの水系をまとめる。

寝覚発電所木曽川取水堰

寝覚発電所木曽川取水堰は福島町にある県立木曽病院そばにある。ここで取水した水は寝覚発電所に送られる。取水口は木曽川左岸にあり、取水後一旦暗渠となってから導水管へと流れていく。

寝覚発電所木曽川水路橋

国道19号線で元橋信号を過ぎたガソリンスタンドの裏にアクセス道路がある。この道路を進むと水路橋が見えてくる。この水路橋はサイフォン式で送水している。水路橋に至る途中に送り側のサージタンクと思われる構造物がある。水路橋は導水管を抱える構造となってり、橋は車が通行することができる(但し高さ制限2.5メートル)。導水管は対岸(木曽川右岸)のサージタンクに向かっている。左岸のサージタンクよりもかなり低い位置にある(サイフォン式)。

木曽ダム取水口と水路合流点

木曽ダムと水路橋の位置関係。両方の水が合流して寝覚発電所へ送られる。木曽発電所への導水管はこの合流点の地下にある模様。資料(ウィキペディア)によると、木曽ダムの取水口はコンクリート節約の為に上下2段になっており、下段が木曽発電所への取水口らしい。また、木曽発電所の木曽ダムからの最大取水量60立方メートル/s木曽発電所の最大使用水量60立方メートル/sは同じなので、木曽発電所は木曽ダム以外からの受水は無いと判断できる。つまり、上下2段の導水路となっているが上段の水(寝覚発電所木曽川取水堰の水路橋経由の水)は木曽発電所には送られていないと判断できる。

木曽ダム取水口の水は左から、寝覚発電所木曽川取水堰の水は右から入り、手前の水門に送られる。写真撮影時には水門のゲートは閉じられており水流はなかった。

木曽ダムの取水門(木曽ダムの王滝川右岸側)。ゲートが前後で2枚重なっている構造になっている。このとき、手前側のゲートは下りている(閉じている)。奥側のゲートは上がっているので、手前側のゲートが寝覚発電所へ送水する水門と思われる。

寝覚発電所

木曽ダムおよび木曽川からの水は寝覚発電所に送水される。発電所上部に受水池があり、その中央に取水口がある。2本の導水管で発電所に送水される。排水は上松発電所へ送水され、送水路は小川河口付近の地下を通る。受水池には木曽ダム方面からの水に加えて小川取水堰からの水も流入している。

木曽ダム及び木曽川取水堰(福島町)と、小川取水堰から寝覚発電所までの間には沈砂池がない。このことから、寝覚発電所の貯水槽の構造は沈砂池を兼ねているのではないかと想定される。

国土地理院の地図によると、導水路は貯水槽を経由せず直接発電所に送水している図になっている。しかし、実際には発電所に繋がる送水管2本は貯水槽から発しており、地図のような構造にはなっていない。この部分は不可思議な点として残る。

導水管の中央部には導水管を渡る橋があり、以下の写真はその橋から導水管上部と下部を撮影した写真になる。導水管の北側には受水池のオーバーフロー水を流す開渠が設置されている。

発電所上側を走る道路の上部で導水管は下方向に曲がり発電所へと送水される。変電所は木曽川十流側の高台にある。

小川取水堰

小川取水堰は寝覚発電所から1.8キロほど小川上流にあり、標高はおよそ740メートルある。寝覚発電所受水池が740メールから僅かに低いので(国土地理院地図より)導水路の勾配はほとんどないと推定される。撮影時には取水路ゲートは閉じていた。

木曽ダム・木曽発電所間の導水管と寝覚発電所・上松発電所間の導水路

木曽ダムから木曽発電所へ送水する導水管は小川を渡る。撮影時は補修工事中だった。

寝覚発電所から上松発電所への導水路は小川河口の地下を通る。Google Map中の赤丸部分に導水路が通っている。Google Map拡大写真では導水路外壁の形状が見て取れる。実際に現場にいった時は河口は石がかなり堆積しており、導水路外壁は寝覚発電所側に確認できるのみだった。写真中の青線が導水路の位置と想定している。

上松発電所

上松発電所は1947年運用開始と戦後の発電所となるが、桃山発電所木曽川取水堰堤は1923年(大正12年)の運用開始に合わせて竣工している。そのため大正と昭和の2世代設備合体発電設備となっている。発電所の上部には巨大な貯水槽が配置されている。

取水口部分は大正時代の構造体(石積)に戦後に建設された上松発電所(コンクリート)が合体している。桃山発電所への取水口は昭和の建築(コンクリート)になってる。

大正時代の取水堰部分は他の取水口同様に石積みの構造となっている。

隣接する吊り橋は老朽化の為通行禁止になっている。

発電所上に貯水槽がある。有効落差は21.10mと可也コンパクトな発電所となっている。変電所は木曽川下流側に設置されている。

発電所の横に慰霊碑がある。背面には昭和2x年と書かれているので上松発電所建設時のものだと思われる。殉職者として14名ほどの氏名が記載されている。可也大きな事故があったことが想像される。

上松発電所下流沈砂池

上松発電所の直ぐ下流に沈砂池がある。この沈砂池は導水路から木曽川の側に大きくはみ出した構造となっており、流入口と流出口が大きく曲がっている。また流入口の水流が速いことから、それなりの勾配があると思われる。また流出口勾配がある。

沈砂池流入口の様子。流入口から水路幅の広い沈砂池に偏りなく水を送るための整流壁が備えられている。

流入口を上から見た様子。整流壁がないと砂が左岸に偏るのかもしれない。

流入口の水流の動画。

流出口方向を見る。流出口には勾配が付けられおり水の流れが速くなる。

流出口から流入口側をみる。

桃山発電所

発電所の木曽川上流側に変電所があり、木曽川下流側に排水口がある。排水口の水は沈砂池へ送られる。

桃山発電所

桃山発電所の排水は沈砂池を通る。

沈砂池手前にはゲートがあり、須原発電所への送水を制御することができるようだ。

なぜ、木曽川側のアーチ下部がコンクリートでふさがれているのか。大桑村史P779によると、須原発電所の取水は上郷木村地区にて大桑発電所取水堰と同様の方法で行われていたが、昭和初期に流失してしまったので、その上流の桃山発電所から導水管にて直接取水するようにしたようだ。木村地区の場所が特定できていないが、桃山発電所・須原発電所間で導水路が露出しているところはここしかないことから、このゲート部分が当時の取水口跡であり、コンクリートの壁部分から木曽川の水を取水していたものと思われる。

須原発電所への送水を止めた場合、導水路の水はゲート左の穴を通って木曽川に放水される。放水口をこの穴だけに限定するために他の穴はコンクリートで閉じたのだと推定される。

ゲートの下流部、木曽川右岸に残っている川底に残っている石とコンクリートで補強されている川底は流失した取水堰の下流部分の越流による川底浸食防止のための構造遺構と思われる

恐らくこのゲートの右側の木曽川部分に取水堰堤があったものと思われるが、現在はその痕跡は見当たらないようだGoogleで上空からの写真を見ると、ゲートの右部分の壁が木曽川に向けて伸びている。この延長線上に堰があったと思われる。現在稼働中の上松発電所横の桃山発電所木曽川取水堰の構造を参照すると、これとほぼ同じものがあったと想定できる。そして、左上部の桃山発電所からの排水口はこの堰流失後に桃山発電所の排水を直接取り入れるために後から設置されたものと判断できる。

水はゲートから導水路を流れてくる。

水は沈砂池に導かれる。

沈砂池を通過した水が再び日を浴びるのは須原発電所の導水管前ゲートになる。この沈砂池の横には祠の跡らしきものがあった。恐らく建設当時に安全祈願をした祠が祀られていたのだろうと思われる。

いつもNAVIによると、ここは皇大神宮(天照大神が御祭神)跡らしい。

桃山発電所から続く導水管は暗渠のまま須原発電所につながる。

和村地区導水路

和村地区の導水路の鳥観図。導水路暗渠部分は青字部分になる。赤い四角部分に水流確認口がある。

上記鳥観図上の番号順に現地写真を掲載する。

1地点:足元に暗渠がある。上流部分は段丘になっており、この先からトンネルとなっている思われる。

2地点:暗渠は宮の沢を渡る。宮の沢の橋下には暗渠補強構造が見える。

3地点と4地点:この地点では電信柱は暗渠の左岸側に暗渠に沿って立っている。

5地点と6地点

7地点

8地点:和村の大沢を超える導水管橋。

須原発電所の取水口

須原発電所

須原発電所

発電を終えた水は発電所下部より排水される。

須原発電所・木曽発電所間の取水口と導水路

排水された水は大桑発電所に向かう。

須原発電所の取水堰から水を補給する。

この取水堰の木曽川左岸には橋場発電所の放水口がある。つまり、伊奈川水系の発電水をこの堰に放水することで大桑発電所の発電水として利用している。このため、大桑発電所は、木曽川、王滝川、上松小川、伊那川、大桑殿小川が水源となる。

取水口の左にある堰からまっすぐ下流側に伸びている溝が魚梯と思われるが、渇水期には水が流れていないので魚梯として機能しているとは言い難い。

須原発電所堰堤取水口を過ぎると木曽川に水路水を排水するゲートがある。大桑発電所停止時には水路水をここで木曽川に排水する。

須原発電所下流ゲート

須原発電所下流にある、大桑発電所への送水ゲート。この時は導水路の水は大桑発電所へ送水されていた(木曽川への放流はなし)。

ゲートから取水堰方面(上流側)をみる。取水堰手前に祠があるが詳細等は不明。

木曽発電所

右上の尾根にみえるのがサージタンク。その下に木曽発電所がある。圧力管の水圧緩和と発電所に排水する水量の調整をこのサージタンクで行う。サージタンクからオーバーフローする水は小川側に排水される。以前は排水路が小川側から見えたが、今は木々にかくれて目視確認ができない。

サージタンクに繋がる導水路の掘削口が今も大沢上流の旧清掃センター跡の近くにある。掘削して排出された土砂によって旧清掃センターがあった場所が埋め立てられた。今は木々に隠れてい見えないが、ここの谷を埋め立てた土砂が大沢に崩落しないように、ロックフィルダム同様に巨大な石による石垣が組まれ、その中に廃土が入れられ、その上に清掃センターが建設された。土石流が発生した場合、須原発電所への導水路が被害を受ける事を考えれば、関西電力として当然の施工であったと思われる。

木曽は積んで所の工事は1968年に完了している。以下の写真は1977年の市阿新。

発電所への入り口ゲート

木曽発電所は地下発電所の為、外からはその様子が分からないため、発電所の仕組みを描いたパネルが掲示されている。ただ、随分の時間が経っているため、右下の緒言の記載文字が消えている。

諸元:
圧力トンネル長:14.881Km(木曽ダムからサージタンクまでの距離)
有効落差:約240メートル
発電所位置:入り口から300メートル奥
発電所規模:
  高さ:33メートル
  奥行:39メートル
  幅:16メートル

山の上にある巨大な土管はサージタンクである。

放水口は大桑発電所の横(木曽川上流側)にある。

サージタンクまでの道とその様子

サージタンクに通じる道は管理がされている(恐らく定期的に巡視がおこなわれているのであろう)。木曽発電所横に登り口がある。

道は整備されている。ただし、所々に巨木の倒木は見受けられる(撤去にはチェンソーなどの機材を要する)が、小枝などの散乱や崩壊による歩行困難な箇所はない(2023年12月現在)。

途中の坂の折り返し点でまっすく進む道が出現する(発電所から10分程度)。その先に点検口がある。冬季の木々が落葉している時期にはこの点検口は対岸からも視認可能。

金網越しに点検口内部を確認した。金網の網目が小さいので落ち葉などは進入していない。かなり不思議な事だが、トンネル奥に明かりが見えた(2023年12月14日)。

発電所から30分程度上るとサージタンクに到着する。サータンク前は広い空間があるが木が茂っている。

登り梯子があるがロックされている。山側のコンクリート壁の中からゴーという振動音が聞こえる。

ほけ山山頂(昔はTV中継局があり、今は村防災無線中継局がある)に続く道は、ほぼ消滅している。急斜面で足場も悪いので単独で歩くのは危険が伴う。

小川方面と大島地区を見る。

サージタンク尾根の小川側斜面の入り口

サージタンクのある「ほけ山」尾根の小川側斜面に続く道がある。しっかり作られた道で手入れがされているように感じられる。

この道を下って行くと斜面に作られた踊り場に着く。そこには横穴トンネルのゲートが2つある。

一つ目のトンネルは奥で左に曲がっているように見える(暗くてはっきりはしない)。

二つ目のトンネルはサージタンクの直下に真っすぐ繋がているように思える。

二つのトンネルの位置関係を動画で見ることができる。動画では二つ目のトンネルが先に登場する。

これらのトンネルにはアクセス道路がない。1977年の航空写真ではサージタンク西側の小川側斜面に段々上の法面が作られていることがわかる。

1947年の写真ではこの法面部分は谷になっているようだ。恐らく掘削土砂をこの谷に投棄したのではないかと思われる。

国土地理院の空中写真ライブラリーからダウンロードした写真が以下になる。

須原発電所・大桑発電所間の導水路

須原発電所からの導水管出口。

沈砂池がある。

沈砂池を過ぎると再び導水管となる。

導水管は小川の下を渡る。小川橋から見える堰の下を導水管が通っている(導水管横断ポイント)のではないかと思われる。

導水管を川の浸食から保護するための構造物と思われる。これは取水堰ではない。

導水管横断ポイントのすぐ上に小川の水を導水管に取り込む取水堰と取水口がある。取水口と導水管横断ポイントとの位置関係から、取水した水は導水管にそのまま落とされていると思われる。ただ、この先大桑発電所までの間に沈砂池はない。

小川を越えた後、木賊川を越えるが、ここも川底から十分に余裕をもって導水路を通すことを前提に550メートル等高線で考えると導水路経路は以下のようになっていることが想定できる。なお、沈砂池の流出口の標高を等高線から525mと読み、発電所直上の導水路標高を同じく522mと読むならば標高差は3メートル程しかない(ほぼ水平)ということになる。

大桑発電所のすぐ近くに導水管出口がある。

水は大桑発電所の導水管取水口につながる。

大桑発電所

大桑発電所

発電所へつながる導水管の取水口

導水管は3本ある。

大桑発電所は木曽ダム水系導水路の終点発電所となる。発電を終えた水は木曽川に放流される。放水口は随分と埋まっており、木曽川の水量が多い時には見ることができない。放水口は写真中の赤矢印の場所にある。

大桑野尻発電所

読書ダム右端からダム放水点に続く導水管の先に発電設備がある。サイフォン方式でダムの水を取水している。

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